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EXHIBITION ARCHIVE

POST/PHOTOGRAPHYとは、DX(デジタル・トランスフォーメーション)による社会の変容以降の「写真のあり方」を根源的に問うことである。2010年代はSNSの時代であり、20年代はメタバースの時代へと、さらに加速される。その背後に進化するAIがあり、極論すれば人間にできることは何か、その問いの嵐が吹き荒ぶ。ヴィレム・フルッサーが指摘したように、その最前線にいるのは「写真家」だ。むろんその「写真家」は真実や決定的瞬間の者でなく、リアルとヴァーチャルの両方に増殖するジャンクスペースを高速で猟歩する者でなくてはならない。


今回のキュレーションのタイトルは「Bleeding Edge」とした。トマス・ピンチョンの「血の匂う」小説タイトルからの借用である。小説は今や現代思想以上にプレコグめいているから。10年前に発表されたこの小説は、シリコンアレーとディープウェブ産業を舞台とするノワールだが、「Deep Archer(出発departureのシャレ)」というメタバースまがいのプログラムを登場させる(また2008年に劉慈欣により発表された小説『三体』にもメタバースが登場した)。そして迎えた2020年代に、POST/PHOTOは、さらに何を触知するのか?


「渦巻きvortex」状に構成されたギャラリーオーブに配置されたのは、京都芸術大学の写真・映像コースや卒業生から選抜された17名。そして現代写真アートのブリーディング・エッジをディープに切開する松井祐生と伊藤颯をゲストアーティストに迎え、ウィザードな展覧会を世に問う。


写真前線では、どんな血が流れるのか、いや、血などとっくに蒸散したか?

  後藤繁雄

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